今年の豪雨で起きた中岳~間宮間の登山道崩壊を何とかすべく
7月30日現地検討会を行ないました。
7月2~5日までの雨量は、通常よりもかなり多かったようですが
崩れ方は今までになく大きいものでした。
この被害はこれから増えるのか、対応できるのか、今後はどうすべきか
いろいろと考え、実行していかなければなりません。
山守隊ではまずは関係者間の情報共有が大事と考え、
資料を作り環境省へ伝達、環境省が現地観察会を企画、という流れになりました。
これに先立ち、北大で土壌侵食を研究されていた長澤先生に意見を伺い、
今回の原因の可能性を聞いていました。
長澤先生によると、
冬の間凍結していた土壌がだんだんと融解していくときに今回の豪雨があり、
本来は土壌下に浸透していくはずの水が凍結している土壌で溜まり
緩んだ土壌を押し流してしまった可能性があるとのことでした。
なるほど、そういえばいつもの豪雨との違いはその時期でした。
いつもは7月下旬から8月中旬にかけてが多いですが、
今期は7月初旬。しかも6月は日照時間が少なかったはずです。
いつもより、凍土の層が上部にあった分、
土壌が飽和できる水量が少なかったのかもしれません。
北海道では道東の農地でも春先の時季外れの豪雪などで
同様のことが起きているそうです。
あくまで可能性であり、実際は流水で流されたのかもしれません。
そういう事前情報を得つつ、現場検証、対応策の検討です。
参加は環境省、北大の渡辺先生はじめ、山のメンメンです。
現地に行くまでにも、いつもと違う侵食個所を検討しつつ。
この侵食層はなぜ起きたのか、とか。
こちらでも大規模な崩落が。
縦に分断されているのはなぜか、とか。
一昨年の施工の効果も観察。
昨年よりも芽吹きが増えている。越冬したものもありそう。
実はこれは凄いこと。今度特集しますね。
昨年施工した個所にも土壌の堆積やチングルマの芽吹きを確認。
山守隊の会員さんにも会いました。
中岳温泉も水の流れを変えなければマズいね・・。
現場への道中ではガリー(谷底)に7月初めの豪雨で流れてきたと思われる
大量の土砂が見えました。残雪の上を走ってますね。
そんなこんなで現場。
どうする?これを!
登山道だけ見ていてはわからないこともあります。
登山道外へ出て状況をしっかりと観察します。
我々関係者でもむやみに登山道外へは出られないので、貴重な視察です。
侵食箇所には亀裂もあり、今後の植物帯の崩れも想定されます。
崩れた土壌は脆く、流水で流されてしまいます。
もしやと思い、登山者に踏まれている土の塊を・・
ひっくり返してみると・・・
植物帯の塊でした。この状態でも花をつけていました。
こちこちらもそう。
これらを再確認して、思いは強くなりました。
自分の中ではやるべきことは決まっています。
現存する植物を守り、植物の基礎になる土壌の流出を防ぐこと。
資材は多量に必要、労力も少なくない。
でもやらなければダメでしょう。
現場から下り、ビジターセンターで今後の対策を検討。
出た具体案は少なく、案外難しい場所のようです。
「ほっといてはどうか」との案もありましたが、自分には無理です。
この状況を見てほっておけるはずがない。
土嚢やテンサーという素材を使った工法を提案してきました。
最後に北大の渡辺先生が、この地形の貴重性を話してくれました。
ここは植被階状土と呼ばれ礫地と植生地が階段状に並ぶ珍しい地形であること。
日本には例が少なく、大雪山にその大多数の地形がみられること。
登山道を中心にその地形が大きく崩れていること。
それらをしっかりと認識するべきとのこと。
確かに階段状になっている植物地形を登山道が分断し、
そこから崩れが広がっているのがわかります。
画面中央が崩壊の場所です。
(調査のために申請をし、ドローンでの撮影)
我々関係者が大雪山で当たり前に見ている景観は、
実は日本ではほとんどない地形だったりします。
もう「誰か何とかしてくれ」と言いたくありません。
なんとかするのは自分たちだ、と思っています。
この危機的な状況で動けないならば、何が起こっても動けるはずがないですね。
計画を立て、調整し、行動したいと思います(現在進行中)。
皆さんへの協力もお願いすると思います。
場所が御鉢平の一部なので現場に行くことも大変な場所ですが、
「やってやるぜ」という人がいれば、
「たまたま通るよ」という人がいれば
一緒に行動できるよう調整したいと思っています。
その時はどうぞよろしくお願いします。
おかざき
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