大雪山・山守隊 スタッフブログ

カテゴリ: 山の崩れ

8月27日、7月の豪雨で被害のひどかった中岳~間宮間の補修が始まりました。
もはや秋の気配もあり、急がねばなりません。

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このルート(場所)は環境省が管理する場所。
施工するにはいろいろと調整が必要ですが、
大急ぎで整えてもらい、シーズン中に始めることができました。

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業務として出してもらいましたが、それでも人手が足りないので
環境省上川、東川の方々総出で手伝っていただき、
まずは荷上げと、どの程度の進捗になるか、施工のイメージ想定等
今後の想定をすべく、試し作業から始まりました。

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当日は晴れ、雲海も広がるいい天気。
真っ先に色が付くウラシマツツジは紅葉が始まっていました。

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中岳分岐着。

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約40mの大規模な崩れの最初の部分を補修します。
一番下流側を施工することで、今後の土砂流出があっても
まずはここで溜まる状況を作ります。

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中岳分岐に溜まった土砂を運搬し、土留めを作る施工です。
土砂の溜まりを調査。掘り過ぎてはいけない。
登山道整備の時には、目的のために過剰に施工してしまうことが多々あります。
堆積前の状況を知りつつ、最低限を目指します。

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約20㎝程の厚さでかなりの土砂堆積がありました。
クワやスコップを使い、土嚢を作ります。
道具はシンプルになればなるほど技量が必要です。
職人は道具を持つ姿を見るだけで
上手か下手かがわかるんですゼ。

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あとはひたすら荷上げ。

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東川事務所、齋藤さんも25~30㎏の重さにビビりながらもめげることなく。

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頑張るオトコイワキ。

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足の速い大久保さんも重さには弱いようです。

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桝さんも60㎏オーバーに挑戦。

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潰れそうですが、根性ですね。

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山守隊チームはいつものごとく。
「つらくてもつらくない」

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約2時間ほどで25~30㎏の土嚢が80袋ほど現場に運搬出来ました。

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そこからが難しい施工です。
ようやく始まりです。

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木材や過去には石材での施工がありますが、火山灰土壌の場合、
なかなかうまくできた事例は少ないと思います。
流水がある場合、ほんの少しの隙間から砂時計のように
土壌が流れ出し、崩れることがよくありました。
できるだけ現場にある地質と同じ状況を作り出すため
土嚢やテンサー(写真)等を使って、水の浸透も考慮した施工を行ないます。

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水の道、堆積する場所、人が歩く道、見た目のバランス、
今後の崩れや植物の移動も考慮して「今できること」を考えます。
施工前後

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人みちをかさ上げして法面の崩れを防ぐこと
ガリーになっている水みちには今後の土砂堆積を考慮すること

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降雨後には自然が出してくる「答え」が見られると思います。
小さな「答え」も見過ごさず、臨機応変な対処が必要です。

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帰る直前、菅原君が初めてクマを見つける。
御鉢の中にいたけっこう大きな個体。
作業場から300mほどの草地でうろうろしていたようです。

この環境を何とか良い方向へ持っていきたいと思いました。


今年の豪雨で起きた中岳~間宮間の登山道崩壊を何とかすべく
7月30日現地検討会を行ないました。

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7月2~5日までの雨量は、通常よりもかなり多かったようですが
崩れ方は今までになく大きいものでした。
この被害はこれから増えるのか、対応できるのか、今後はどうすべきか
いろいろと考え、実行していかなければなりません。
山守隊ではまずは関係者間の情報共有が大事と考え、
資料を作り環境省へ伝達、環境省が現地観察会を企画、という流れになりました。

これに先立ち、北大で土壌侵食を研究されていた長澤先生に意見を伺い、
今回の原因の可能性を聞いていました。
長澤先生によると、
冬の間凍結していた土壌がだんだんと融解していくときに今回の豪雨があり、
本来は土壌下に浸透していくはずの水が凍結している土壌で溜まり
緩んだ土壌を押し流してしまった可能性があるとのことでした。

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なるほど、そういえばいつもの豪雨との違いはその時期でした。
いつもは7月下旬から8月中旬にかけてが多いですが、
今期は7月初旬。しかも6月は日照時間が少なかったはずです。
いつもより、凍土の層が上部にあった分、
土壌が飽和できる水量が少なかったのかもしれません。
北海道では道東の農地でも春先の時季外れの豪雪などで
同様のことが起きているそうです。
あくまで可能性であり、実際は流水で流されたのかもしれません。

そういう事前情報を得つつ、現場検証、対応策の検討です。

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参加は環境省、北大の渡辺先生はじめ、山のメンメンです。

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現地に行くまでにも、いつもと違う侵食個所を検討しつつ。

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この侵食層はなぜ起きたのか、とか。

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こちらでも大規模な崩落が。

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縦に分断されているのはなぜか、とか。

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一昨年の施工の効果も観察。

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昨年よりも芽吹きが増えている。越冬したものもありそう。
実はこれは凄いこと。今度特集しますね。

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昨年施工した個所にも土壌の堆積やチングルマの芽吹きを確認。

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山守隊の会員さんにも会いました。

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中岳温泉も水の流れを変えなければマズいね・・。

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現場への道中ではガリー(谷底)に7月初めの豪雨で流れてきたと思われる
大量の土砂が見えました。残雪の上を走ってますね。

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そんなこんなで現場。
どうする?これを!

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登山道だけ見ていてはわからないこともあります。
登山道外へ出て状況をしっかりと観察します。
我々関係者でもむやみに登山道外へは出られないので、貴重な視察です。

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侵食箇所には亀裂もあり、今後の植物帯の崩れも想定されます。
崩れた土壌は脆く、流水で流されてしまいます。

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もしやと思い、登山者に踏まれている土の塊を・・

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ひっくり返してみると・・・

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植物帯の塊でした。この状態でも花をつけていました。

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こちこちらもそう。
これらを再確認して、思いは強くなりました。

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自分の中ではやるべきことは決まっています。
現存する植物を守り、植物の基礎になる土壌の流出を防ぐこと。
資材は多量に必要、労力も少なくない。
でもやらなければダメでしょう。

現場から下り、ビジターセンターで今後の対策を検討。
出た具体案は少なく、案外難しい場所のようです。
「ほっといてはどうか」との案もありましたが、自分には無理です。
この状況を見てほっておけるはずがない。
土嚢やテンサーという素材を使った工法を提案してきました。

最後に北大の渡辺先生が、この地形の貴重性を話してくれました。
ここは植被階状土と呼ばれ礫地と植生地が階段状に並ぶ珍しい地形であること。
日本には例が少なく、大雪山にその大多数の地形がみられること。
登山道を中心にその地形が大きく崩れていること。
それらをしっかりと認識するべきとのこと。

180724 間宮 登山道並び渓部(高空)_Moment

確かに階段状になっている植物地形を登山道が分断し、
そこから崩れが広がっているのがわかります。
画面中央が崩壊の場所です。
(調査のために申請をし、ドローンでの撮影)

我々関係者が大雪山で当たり前に見ている景観は、
実は日本ではほとんどない地形だったりします。

もう「誰か何とかしてくれ」と言いたくありません。
なんとかするのは自分たちだ、と思っています。
この危機的な状況で動けないならば、何が起こっても動けるはずがないですね。

計画を立て、調整し、行動したいと思います(現在進行中)。
皆さんへの協力もお願いすると思います。
場所が御鉢平の一部なので現場に行くことも大変な場所ですが、
「やってやるぜ」という人がいれば、
「たまたま通るよ」という人がいれば
一緒に行動できるよう調整したいと思っています。

その時はどうぞよろしくお願いします。
おかざき





  岡崎です。
近頃の台風による水害は想像を超えるものが多いですが、
7月5日、大雪山周辺でも想像を超えた侵食が起きました。
今日は登山道整備の専門家としての考察をしてみたいと思います。
場所は御鉢平にある中岳分岐~間宮岳間、間宮城と呼ばれる石組みの付近です。

侵食前は植物群の崩れはあったのものの、
高山帯でよく見かける踏圧から始まった、流水や風砂、
凍結融解現象(霜柱)による侵食でした。
以下、同じ場所の侵食前と侵食後(7月6日)です。
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常々侵食を記録していますが、一夜にしてここまで崩れたことは記憶にありません。
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最大侵食箇所では、幅3m以上、高さ2m以上に渡って土壌が無くなっています。
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約30mに渡って激しい侵食が続いています。
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関係者間では間宮城と呼ばれる法面止めの石組みも大きく崩れています。
この石組は景観にそぐわないものでしたが、強度はかなりのものだと思っていました。

そしてこの侵食が不思議なのは、これだけの土壌が無くなっているのに、
中岳分岐までの間に崩れた土壌の堆積が少ないことです。
もっと下流側に流れた可能性もありますが、それでも少ない。
また、崩れた個所の路床(歩行路)は崩れる前の歩行路と同じです。
要するに流水で削られたのではなく、陥没した可能性があると考えます。
この場所を歩くとき、強く足踏みすると「ポワン」と響く音がしていました。
そういう場所は高山帯の各所にあります。

御鉢平などでは表土の下1m以下の場所は凍土があると言われています。
おそらく、火山灰などが凍結し凝固している状態だと思われます。
ここ数年は、登山道が深く削られ、日光などで暖められた時、
凍土が融けることによって表土が崩れる現象も指摘されていました。
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これは間宮城ができる前の侵食の様子です。
この侵食も凍土融解の可能性が指摘されていました。
この崩れに対応すべく、城壁のような石組みが出来ていました。

中岳分岐の近くではこのような場所もありました。
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植物帯にスリットのような崩れが発生しています。
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正直、これはよくある崩れですが、気になったのは
調査のため植物帯を歩いた時でした。
部分的に異常なほどフワフワな場所がありました。
おそらく、表土の下の火山灰が流れ出し、
植物の根で表土だけが固定されている状態だと思います。
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このままでは近々に、植物帯にスリットがたくさん入ることになると思われます。
これらを放置したとき、同じような陥没になる可能性もあります。

今まで登山道侵食は、登山者の踏圧や雨などの流水が土壌を削ること、
霜柱によって法面が少しづつ削られることが大きな要因でした。
ですが、これからは凍土が融けることによって、
表土ではなく地盤下の土壌が流れ出す侵食が
大きな要因になってくる可能性が高いと思われます。

原因は気温の上昇かもしれないし、
ガリー侵食を放置したことによるものかもしれないし、
さまざまな原因が複合しているかもしれない。

どちらにせよ、凍土融解による侵食事例は国内にはなく、
これに対応した施工もほとんどないと思われます。
今までと同じような、流水や踏圧侵食への対応では、これは改善できません。
この日、御鉢平を廻ってみましたが、
各所で凍土融解の可能性がある侵食を見ました。
大雪山の高山帯ではどこでも起きる可能性があります。

山守隊ではこれらのデータを環境省や北海道大学に見てもらい、
侵食の要因や今後の対応をスムーズにすべく、現場での視察会の提案をしました。
場当たり的な対処をするよりも、原因を知り、予兆を捉えることが必要だと思います。
今後、環境省が中心となって行なわれる予定です。
まずは関係者間の情報共有が大事であり、
自然の大きな変化には考え方を変えて臨む必要があると思います。

皆さまが歩かれたときにも、大きな崩れや、何か変だ、という場所がありましたら
やまレポのほうへ写真を送っていただけると助かります。



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