スノーモービルでの資材運搬
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スノーモービルでの荷上げを考え始めたのはもう78年前になります。

登山道整備において、作業の半分以上は荷上げです。
侵食量と整備できる量のバランスをとるには資材運搬が一番の課題でした。

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人力荷上げの限界はとっくにわかっているけれど、変わる代案はなく、どんどん崩れていく登山道。
なにもできない焦燥感が膨らむ毎日でした。


現状、ヘリを使えるお金はない。

行政も今までと同じ管理体制を続けることが基本で予算増は見込めない。

それを批判はすれど変革の行動をしようとしない民間。

皆自分の立ち位置を守ろうとして結局山が崩れていく。

何とかこの現状を打破したかった。

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近自然工法を続け、技術的には多くの場所が直せるようにはなりました。

だけど整備のシステムが変わらなければ侵食と保全のバランスはとれないのです。
自分は整備屋なので、その視点からシステムの改善点を考えました。

「運搬の部分を変えよう」と思い、まず始めたのが「雪の上ならイケる」という前例を作ること。
3年前の整備イベントでソリで資材運搬したのも、このスノーモビルを見据えての行動でした。

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その前例やかつて大雪山で行なわれたモービルでの運搬事例を探すなどし、環境省にアイデアを相談。
担当者の意識も強く、計画が動き始めました。

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昨年はモービル愛好家の方々の協力で当麻乗越までの荷上げルートを探すも、
雪の状態が悪く、1日だけの調査ということもあり、目的地まで行けずに撤退。

実はかなり焦りました。
モービルで行けるだけではなく、かなりの量の資材を上げるのが目標です。
本当にできるのか・・。

ただ、これに賭けるしかありません。

今年はモービルを自費で購入。トレーラーやその他機材を合わせてすんごい金額。
退路を断ちました。

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しかし初めて運転したモービルは「曲らない!なんだこれ!」。
資材運搬どころじゃなく、現地に行くことも出来なさそうな感じでさらに焦り、日々特訓。
幸い、玄関開ければ目の前は田んぼの雪原、という練習には最適な環境もあり、
何とか山行できる程度にはなりました。

また、環境省の理解もあり、今期は数日間の調査期間を設定。
「一度だけ、少しだけでよいから目的地までの木材運搬」が目標となりました。

この調査にはモービル愛好家チームのサポートが必須でした。
運搬ルート作成には運転技術に長けた人が必要です。
とても素人だけでできることではありません。
スノーバイクの機動力で最適なルートを調査、
スポーツタイプのモービルでしっかり踏み固めルート作り、
ようやくソリを動かせます。

今回のチームは「自分たちも自然の中で遊ばせてもらっている。保全に協力したい」
とのことでボランティアのような金額で全面協力。専用ソリ(20万円もする!!)を
自費で購入してくれて今回の運搬試験に備えてくれました。

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初日、モービルチーム+素人岡崎で調査運搬開始。
初回は約120㎏の木材をソリ1台に積み込みました。

ルート調査しつつ運搬するも、急勾配にてこずり、資材をデポ。
まずは乗越までのルート確定を優先に変更。
急勾配に阻まれたり、素人岡崎が埋まったりで時間がかかるも、何とか目的地まで到達!

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2日目、もっと勾配が緩いルートを探索しつつ120㎏の木材を当麻乗越まで運搬達成!感無量です!

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3日目、調査期間内でできるだけ運搬技術を探るべく、素人岡崎も自作ソリで参戦。
自作部分はほんの15分で壊れたり、240㎏載せたらソリがつぶれたり、
載せ方によってすぐにひっくり返ったりと、散々だったけれど雪の状態も良く、
乗越まで自力運搬達成!

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4日目、ソリが壊れないよう、ひっくり返らないようにバランスを見極めながら調整。
簡易なソリでもなんとか行けることを確認。
しかし、当麻乗越到着直後、同行モービルが故障!往復予定も木材をデポして途中撤退。
なんとか帰れたけれど、これは焦りました。

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5日目、環境省職員とデポ資材を乗越まで往復運搬。
資材運搬を終了。

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運搬モービルは2台。実質運搬は4日間。運搬総量約1トン。試験調査としては上出来です。

そしてまだまだ改善の余地があります。

ルート作成の改善、計画的な時期設定、ソリの改善、チーム体制の効率化・・・。

この場所ならば1台で1300㎏程度の運搬はできそうです。
3台程度の運搬部隊と2台程度の道付け部隊がいれば数日で数トンの運搬ができる可能性があります。

場所によってやり方を変える必要がありますが、大雪山各地でも、
どうしようもなかった場所の整備計画が立てられる基礎ができました。


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しかし今後は運搬技術だけでなく、資金調達も課題です。

今回も前回もモービル関係者にはガソリン代程度の日当しかありません。
この事業が定期的に行われ、これにかかわる人件費が今後ついてくるようになることも重要です。
行政努力、民間努力も必要です。

 

今回いろいろな方々の協力で、ゼロを1に変えることができました。

今度は1から10に変える努力です。これは不安ではなく、希望をもってできます。

新たな仲間を増やしつつ「侵食と整備」「利用と保全」の
バランスをとれる管理を目指して努力したいと思います。

アイデアを取り入れてくれた環境省、入林許可申請を受け入れてくれた林野庁、
モービル愛好家を紹介してくれた山岳関係者、ソリまで購入してくれたモービルチームの皆さん、
報道してくれた記者の方、整備イベントでソリを引いてくれた皆さん、
本当にありがとうございました。
おかげで登山道をもっと直せそうです。

もっと面白い計画を立て、また来年です!!

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最終日、行きにはなかった足跡が帰りに・・おはよう!

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パトロールの幟を見て「パトロールってなんだよ!」と取り囲まれる図。
別のモービルチームです。
登山道整備の必要さを伝え、「次回はぜひ手伝って」と言ったら
「喜んで!」と和やかに帰宅。
昔のように国立公園内を縦横無尽に走られるのは論外ですが、
ルールと利用者への思いやりをもって手伝ってもらえるよう働きかけたいです。

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