岡崎です。
近頃の台風による水害は想像を超えるものが多いですが、
7月5日、大雪山周辺でも想像を超えた侵食が起きました。
今日は登山道整備の専門家としての考察をしてみたいと思います。
場所は御鉢平にある中岳分岐~間宮岳間、間宮城と呼ばれる石組みの付近です。

侵食前は植物群の崩れはあったのものの、
高山帯でよく見かける踏圧から始まった、流水や風砂、
凍結融解現象(霜柱)による侵食でした。
以下、同じ場所の侵食前と侵食後(7月6日)です。
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常々侵食を記録していますが、一夜にしてここまで崩れたことは記憶にありません。
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最大侵食箇所では、幅3m以上、高さ2m以上に渡って土壌が無くなっています。
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約30mに渡って激しい侵食が続いています。
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関係者間では間宮城と呼ばれる法面止めの石組みも大きく崩れています。
この石組は景観にそぐわないものでしたが、強度はかなりのものだと思っていました。

そしてこの侵食が不思議なのは、これだけの土壌が無くなっているのに、
中岳分岐までの間に崩れた土壌の堆積が少ないことです。
もっと下流側に流れた可能性もありますが、それでも少ない。
また、崩れた個所の路床(歩行路)は崩れる前の歩行路と同じです。
要するに流水で削られたのではなく、陥没した可能性があると考えます。
この場所を歩くとき、強く足踏みすると「ポワン」と響く音がしていました。
そういう場所は高山帯の各所にあります。

御鉢平などでは表土の下1m以下の場所は凍土があると言われています。
おそらく、火山灰などが凍結し凝固している状態だと思われます。
ここ数年は、登山道が深く削られ、日光などで暖められた時、
凍土が融けることによって表土が崩れる現象も指摘されていました。
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これは間宮城ができる前の侵食の様子です。
この侵食も凍土融解の可能性が指摘されていました。
この崩れに対応すべく、城壁のような石組みが出来ていました。

中岳分岐の近くではこのような場所もありました。
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植物帯にスリットのような崩れが発生しています。
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正直、これはよくある崩れですが、気になったのは
調査のため植物帯を歩いた時でした。
部分的に異常なほどフワフワな場所がありました。
おそらく、表土の下の火山灰が流れ出し、
植物の根で表土だけが固定されている状態だと思います。
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このままでは近々に、植物帯にスリットがたくさん入ることになると思われます。
これらを放置したとき、同じような陥没になる可能性もあります。

今まで登山道侵食は、登山者の踏圧や雨などの流水が土壌を削ること、
霜柱によって法面が少しづつ削られることが大きな要因でした。
ですが、これからは凍土が融けることによって、
表土ではなく地盤下の土壌が流れ出す侵食が
大きな要因になってくる可能性が高いと思われます。

原因は気温の上昇かもしれないし、
ガリー侵食を放置したことによるものかもしれないし、
さまざまな原因が複合しているかもしれない。

どちらにせよ、凍土融解による侵食事例は国内にはなく、
これに対応した施工もほとんどないと思われます。
今までと同じような、流水や踏圧侵食への対応では、これは改善できません。
この日、御鉢平を廻ってみましたが、
各所で凍土融解の可能性がある侵食を見ました。
大雪山の高山帯ではどこでも起きる可能性があります。

山守隊ではこれらのデータを環境省や北海道大学に見てもらい、
侵食の要因や今後の対応をスムーズにすべく、現場での視察会の提案をしました。
場当たり的な対処をするよりも、原因を知り、予兆を捉えることが必要だと思います。
今後、環境省が中心となって行なわれる予定です。
まずは関係者間の情報共有が大事であり、
自然の大きな変化には考え方を変えて臨む必要があると思います。

皆さまが歩かれたときにも、大きな崩れや、何か変だ、という場所がありましたら
やまレポのほうへ写真を送っていただけると助かります。